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【就活コラム】投資銀行編(8) 投資銀行部門のジョブの課題を正しく理解する

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IBDのジョブの課題は、事業会社のジョブの課題とは構造的に異なります(下表)。事業会社のジョブではすでに手段が指定されていますが、IBDのジョブで指定されているのは目的のみです。

事業会社のジョブに慣れている人ほど、IBDのジョブでも手段の提案が課されていると勘違いしやすいので注意しましょう。

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この記事では、IBDのジョブの課題である「クライアントの企業価値向上策の提案」がどのようなものであるかを解説しています。

 

「クライアントの」とは

広義のコンサルティング会社にとって、クライアント・ファーストは当然のことです。しかし、クライアント・ファーストを意識してジョブに取り組める学生は限られています。 たとえば、5チームあれば1チームは、次のような発表をしてしまうでしょう。

・〇〇社を買収するとよい商品が作れるので、消費者が喜びます
・〇〇社との合併が社会のためになります
・計算した結果、適正な買収価格は〇〇億円でした

1つ目は "Consumer is Boss" というメーカーの考え方です。2つ目は利益を追求しない公務員的発想で、3つ目は学術的な視点です。IBDはクライアント・ファーストですから、消費者のためや社会のため、公平性よりもまず、クライアントのためになるかを考えなくてはなりません。

買収金額なら、できるだけ安くなるように尽力するのがクライアント・ファーストです。

 

企業価値向上策の」とは

企業価値向上策とは、十分に簡略化すると「利益向上策」です。
買収提案において企業価値が向上するとは、買収時に支払ったお金以上の利益を得られるということです。

したがって、買収提案が企業価値向上策であるためには、次のどちらかまたは両方が必要です。
・買収後に得られる利益が十分に大きい
・買収時に支払うお金が十分に小さい
前者は、シナジーが大きいことを意味します。被買収企業がもともと大きな利益を生み出していた場合は、それに応じて買収金額が高くなりますので、被買収企業の利益が大きいだけではいけません。 後者は、いわば「利益の大きさの割に買収金額が安い」ということです。株式価格が割安であるということです。

以上をまとめると、「企業価値向上のための買収提案」というのは、「十分に高いシナジーを持つ会社を、割安な価格で買収する」という提案だといえます。ジョブにおいては、シナジーがあるのかという点に特に着目しましょう。そして、「価格は安いほうが良い」というシンプルな原則を守りましょう。 ジョブでも次のような失敗例がよく見られるので注意が必要です。
・この会社は割高ですが、〇%のプレミアムを支払えば買えます
シナジーはありませんが、安定している優良企業です

 

「提案」とは

最終的な意思決定をするのはクライアントであって、IBDではありません。しかし、ジョブにおいては提案ではなく意思決定をするような発表が散見されます。

・私たちのチームは、〇〇社を買収することにしました
・(クライアント名)は、〇〇社を買収します

こういった発表は、IBDの視点ではなく、事業会社の視点になっています。もし、上のような発表をしてしまうと、「この人たちはIBDよりも事業会社に行きたいのだろう」という評価になることでしょう。アドバイザーであるという意識があれば、「~を提案いたします」や「~が最適だと考えられます」といった言葉遣いになると思います。

また、買収提案というのが本質的には「企業という商品を売り込む営業」であることを理解しましょう。そう考えれば、「安くて魅力的である」「(他社ではなく)あなたが買うべきだ」「(将来ではなく)いま買うべきだ」といったアピールが重要だということがわかるはずです。就活生は、買収提案というものを何か特別な業務だと考えている傾向がありますが、本質的な部分は他業界の提案営業を同じです。

 

まとめと補足

IBDのジョブの課題は、①クライアントの②企業価値向上策の③提案です。このことを意識してジョブに臨みましょう。特に、買収提案が企業を売り込む営業であるという意識を持つのは重要です。

また、企業価値向上の手段は問われていませんから、買収・合併・増資・社債発行などどの手段を選んでも問題ありません。しかし、実際には「完全子会社化」の提案を行うのが最も無難です。なぜなら、完全子会社化の提案が最も簡単なため、最もクオリティの高い提案をできる可能性が高いからです。